農地転用とは?許可の条件とかかる費用・手続き完了までの期間を解説
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農地転用を一言で言うと、農地を農地以外の土地に変更することです。
広義の意味だと農地を公共事業に利用する場合もこれに当てはまりますが、個人の場合は主に農地を潰して宅地にすることを指します。
これ以上耕作をする予定のない農地なら転用してしまうのがおすすめですが、転用には許可が要るなど、決して簡単な手続きではありません。
農地転用を検討している方は、この記事を読んで条件や手続きの流れをしっかり理解しておきましょう。
→農地を売却する方法!田んぼや畑を売る手続きの流れ・売買の条件農地転用は難しい!個人が勝手に転用するのはNG
自分の農地であれば、どう使おうが自由と思われる方もいますが、農地の転用は個人が勝手におこなえる訳ではありません。
なぜそうなるかと言うと、以下2つの考え方が根拠になっています。
- 土地は国・自治体が貸与している
- 農地の勝手な転用は国にとってデメリットである
普段は意識しないで生活していますが、家やマンションなどの建物と土地の権利は、実は根本的に異なる部分があります。
家やマンションは、人がその意思によって生み出したものになります。これは、他の様々な商品と同様です。
一方、土地は人が意思によって生み出したものではありません。
国・自治体が便宜上境界を設けて権利を管理しているだけで、本来は誰のものでもなかったはずです。
そのため、厳密に言うと土地は公が市民に貸し出しているものであり、建物のように自由に扱うことはできないのです。
2つ目に、国の農産業の行方は農地の数と絶対的にリンクしているという点が挙げられます。
日本の食料自給率は30%台と言われていますが、これが更に減ってきたら国力が大きく弱まってしまいます。
国の農業生産力を確保するために、農地の転用はある程度制限されているのです。
農地を売る際は農業委員会の許可が必要!どうすれば認めてもらえる?農地転用の手続きは大きく分けて2通り!費用・期間の違いを比較
農地転用の手続きの流れは、大きく分けて以下の2パターンに分かれます。
- 農業委員会へ届け出をする
- 都道府県からの許可をもらう
➀農業委員会へ届け出をする
農地が市街化区域の中にある場合は、管轄の農業委員会に届け出をする必要があります。
届け出の受付は毎月期限があるので、期限内で確実に届出をおこないましょう。
届け出後の返答は締切日から7日~10日後に来ることが多いです。
②都道府県からの許可をもらう
上記の市街化区域とは、(今は違うけど)最終的に市街化する方針の区域という意味です。
そのため、区域内の農地が宅地等に転用されるのは理にかなっており、申し出をすればOKなことも多いのです。
一方で市街化区域外の場合、基本的には農地の市街化を推奨していません。
そのため、より厳正なチェックが必要ということで、都道府県知事からの許可が必要となるのです。
許可の申請は農業委員会経由で都道府県に提出され、締め切りから1か月半ほどで結果が回答されます。
農地転用にかかる費用まとめ
農地転用の申し出時にかかる費用
農地転用の許可そのものは費用が発生しませんが、提出書類の取得代などが実質的なコストとなってきます。
農地転用でかかる費用は、以下の通りです。
必要書類 | 取得にかかる費用・手数料 |
---|---|
法人の登記事項証明書 |
|
土地の登記事項証明書 |
|
農地の地図 |
|
転用後に建築予定の建物図面 | 数千円ほど(依頼した専門家によって異なる) |
残高証明書 | 700~900円 |
融資証明書 | 数千~1万円 |
地区除外申請書および土地改良区の意見書 |
|
その他、取得依頼を受けた書類の取得費用 | 1万~20万円 |
農地転用工事にかかる費用
農地の種類 | 費用の目安 |
---|---|
一般農地 | 1,000円/10a |
生産緑地内の農地 | 数千円/10a |
一般市街化区域内の農地 | 数万円/10a |
大都市の特定市内+市街化区域内の農地 | 数十万円/10a |
農地転用の完了後にかかる費用
農地転用の工事が完了した後も、主に以下2つの費用が発生します。
- 地目変更の登記申請
- 固定資産税
農地から宅地に転用した場合は、登記簿上の地目を変更する必要があります。
自分で申請をすれば数百円の費用で済みますが、土地家屋調査士などに依頼する場合は4万円以上の費用が発生します。
また、固定資産税は農地についても貸されますが、宅地に転用することで税金の優遇から外れ、課税額が跳ね上がってしまいます。
- 一般農地の課税額:1.000円/10a
- 宅地の課税額:数十万円以上/10a
農地を転用する場合は、この点に十分注意しましょう。
農地転用にかかる期間はケースによって大きく異なる
前述の通り、市街化区域の農地転用届なら、2週間以内に受理通知がきます。
ただ、それ以外の地域になると申請してから許可されるまで2か月はかかってきます。
農振・農用地区域の場合は除外手続きもおこなう必要があり、最大1年かかることもあります。
農地転用に大きく影響する農地法4条・5条
農地の取り扱いは、基本的に農地法によって制限されています。
その中でも農地法の4条と5条が、農地の転用には大きく影響してきます。
農地法4条は所有者自身が転用する際に適用される
農地の持ち主自身が転用の申請をおこなう場合のルールが記載されているのが、農地法4条です。
この場合、届け出や許可申請に費用は発生しません。
ただし、届け出・許可申請には以下の書類が必要になるため、取得時の費用が実質的なコストとしてかかってきます。
- 農地法4条の申請書
- 住民票
- 登記簿謄本
- 公図
- その他、必要に応じて書類を提出
また、届け出・許可を行政書士に依頼する場合は、以下の依頼コストが発生します。
- 届け出:3~5万円
- 許可:6~8万円
農地転用後に事業をおこなう場合は、事業計画書なども必要になってきます。
転用後の計画に現実味がないと判断された場合は、転用を許可されない可能性が増えてしまいます。
農地法5条は転用目的で農地を購入する際に適用される
農地法4条は、持ち主が農地を転用した後に売買する際に適用されますが、例えば不動産会社などが好立地の農地を物件建設目的で購入する場合は、農地法5条が適用されます。
この際は、第5条の申請書が必要になりますが、それ以外の書類は4条の場合と同じです。
ただ、行政書士に許可申請を依頼する際の費用が5条は少し高い(7万5,000円~8万円)ので注意が必要です。
許可・届け出をおこなわず勝手に農地転用をおこなったらどうなる?
許可や届け出をおこなわず転用をおこなった場合、発覚した時点で契約は無効になります。
つまり、農地を転用して新しい持ち主に売却をした場合、売買契約自体が無効になってしまうということです。
転用の途中に発覚した場合は工事停止命令が、転用後に発覚した場合は現状復帰命令の勧告を受けるようになります。
転用できる2種類の農地
転用を許可してもらえる農地は、主に以下の2つです。
- 第2種農地
- 第3種農地
第2種農地
第2種農地は将来的に市街化が見込める農地のことで、特に町にポツンとある小規模な農地を指します。
面積が狭いため生産力が低く、個人が耕作をおこなっている例が多いです。
将来的な市街化の可能性が高いこと、農地を維持していても効率が悪いことなどを踏まえて、別の用途への転用が許可されるケースは多いです。
ただ、第2種農地はまだ農地としての期待があるので、理由によっては不許可になるケースもあります。
第3種農地
第3種農地は、第2種農地より更に中心部に近く、市街化真最中のエリアの農地となります。
第3種農地は遅かれ早かれ市街化する見込みが高く、農地転用も基本的に許可されます。
転用できない3種類の農地
一方で、以下3種類の農地の転用は原則許可されません。
- 農用地区域内農地
- 甲種農地
- 第1種農地
農用地区域内農地
農用地区域内農地は、農地の中でも高い農業生産力を持っています。
こちらは農業振興地域とされ、国の農業生産の柱となっています。
国の農業生産に大きく関わるため、転用はほぼ許可されません。
甲種農地
甲種農地は市街化調整区域内の農地の中でも、優良と見なされた農地になります。
農用地区域内農地などと比べて優先度は高くありませんが、こちらも厳しい転用制限がかかっています。
第1種農地
第1種農地は10ha以上の農業公共対象農地で、高い生産性を期待されています。
第1種農地も転用の可能性は低いと考えられます。
甲種農地・第1種農地の転用が許可されるケース
上で挙げた転用できない3つの農地のうち、農用地区域内農地に関しては転用できる可能性がほぼありません。
しかし、甲種農地・第1種農地に関しては、農業という大きな括りで利益が発生するような転用目的であれば、許可されるケースがあります。
例えば、農業販売施設や加工施設、農作業器具に関する施設の建設・運営を目的とする場合は、十分許可される可能性があります。
それ以外の目的となると、甲種農地・第1種農地でも転用は原則できません。
農地転用の許可は3パターン
農地転用は、届け出・申請を吟味してもらい、OKが出れば実施することができます。
ただ、誰が許可をするのか、どのようなフローで手続きが進むのかに関してはケースによってバラバラです。
転用の許可は、主に以下の3パターンとなります。
➀通常の農地は農業委員会を通じて都道府県知事の許可を得る
一般的なサイズの農地や個人がやっているような小規模農地の転用申し出は、管轄の農業委員会に対しておこないます。
農業委員会を通じて判断され、最終的な許可は都道府県知事によっておこなわれます。
②4ha超の大規模農地は農林水産大臣と協議をして許可を得る
4haというと、だいたい東京ドーム1個分という大きな規模になります。
この規模の農地を転用する際は、農林水産大臣と協議をして許可を得る必要があります。
③許可権者が先に転用を決めた場合は許可不要
土地収用や農業経営基盤用化促進など、国や自治体が政策の一環として農地転用を決定する場合があります。
この決定には都道府県知事や農林水産大臣も参加しているので、国・自治体から発表があった時点ですでに目を通しています。
この場合は再度許可を申し出る必要はありません。
農地転用の細かい条件は自治体によって異なる!まずは窓口に相談しよう
ここまで農地転用の基本的な内容を紹介しましたが、自治体の事情や農地の状況は1つとして同じではありません。
ある自治体で転用不許可になっても、他の自治体で許可されるケースはあるので、一度窓口に相談してみることをおすすめします。
土地を売りたい時は何が必要?売却の流れと方法・かかる費用や税金・注意点を解説