土地を国に買取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」とは?制度利用の条件や利用上のメリット・デメリットについて解説
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不要な土地を国に買い取ってもらえれば、売却金も手に入るほか、遊ばせている土地の維持や管理からの解放されます。
とはいえ、そもそも土地の買取を国に依頼できるのか、疑問に感じている方もいることでしょう。
この記事では、国に不要な土地を買い取ってもらえるのか、買取を拒否された場合にはどのような対処法があるのか、といった点を詳しく解説していきます。
さらに、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度「相続土地国庫帰属法」についても詳しく解説します。
国に土地を買い取ってもらおうと考えている方は、ぜひ最後まで目を通してください。
土地の買取を国に依頼するのは難しい
そもそも、不要な土地の買取を国に依頼できるのでしょうか。
原則として、国に土地の買取を依頼するのはかなり難しいです。
というのも、国が土地を買い取るのは、「国有財産法」という法律に基づき、国が買取の必要性を認めた特定の状況下でのみ、土地の所有者は国への土地売却をみとめられるからです。
例えば新しい鉄道路線や道路、公共の建物などを建設する予定のエリアに位置する土地に対しては、国が公共性や有用性などを認め、土地を買い取る場合があります。
一方、国に公共性や有用性がないと判断されればその土地は不必要とみなされ、買取には応じてもらえません。
このため、多くの場合は国へ土地の買取依頼は、実際には稀なケースだと考えましょう。
国に土地の買取を国に断られた場合の対処法6選
上でも解説した通り、国に土地の買取を依頼するのは原則として難しいです。
では、国に土地の買取を断られた場合、どのような対処法があるのでしょうか。
以下の6つの対処法を見てみましょう。
- ①自治体に土地の買取を相談する
- ②自治体に土地を寄付する
- ③空き家バンク制度を活用する
- ④土地の買取先の幅を広げる
- ⑤土地の活用方法を考える
- ⑥相続放棄をする
①自治体に土地の買取を相談する
国に土地の買取を断られた場合でも、自治体であれば買取に応じてくれる場合があります。
土地を市町村などの地方自治体に売却する際には、まずは土地買取の意向を示す申出書を管轄の自治体に提出しましょう。
その後、売却予定の土地が自治体の要求する目的に合致しているかを、関連する自治体の部門で相談します。
この時点で、土地の基本的な情報、例えば土地の位置や面積について情報を伝えてください。
土地が活用できると判断されれば自治体がその土地の価値を査定し、査定結果に基づいて売却価格が提案されます。
提示された価格に同意がいかない場合には、価格交渉も可能です。価格に合意が見られたならば、売買契約を締結し、支払条件や土地引き渡しの時期、さらには土地使用に関する条件などを確認します。
取引の締結後、最終的には法務局で所有権の移転登記をすませれば完了です。
ただし、国への買取依頼と同様に公共性や有効性が認められなければ、買取には応じてもらえません。
自治体が土地の買取に応じてくれる可能性は高くないと考えましょう。
②自治体に土地を寄付する
自治体にも土地の買取を拒否された場合、寄付の申し出をするのも手です。
買取ではなく寄付であれば、申し出を受けてくれる場合があります。
ただし、買取同様に地方自治体が土地を受け取るケースは、特定の使用計画がない限り、稀です。
この背景には「固定資産税」が大きく関わっています。
地方自治体は土地の所有者に対して固定資産税を課しており、むやみに土地の寄付を受け入れると、税収が減少減ってしまいます。
さらに、寄贈を受けたとしても、その土地を維持・管理するのにはコストが掛かります。
こうしたことから、土地の寄付受け入れを拒否する自治体が多いのです。
③空き家バンク制度を活用する
不要な土地に建物がある場合、地方自治体運営の空き家バンクへの登録もおすすめです。
空き家バンク制度は、使用されていない家屋を地方振興や地域活性化の資源として利用しようとする目的で、自治体がその家屋の新たな使用者や購入者を見つけ出すサービスです。
上手に活用すれば、建物の解体にかかる費用も節約できます。
ただし、全ての自治体が空き家バンク制度を導入しているわけではありません。
土地を管轄する自治体が空き家バンク制度を導入しているか、事前にチェックしてください。
④土地の買取先の幅を広げる
たびたび解説している通り、国や自治体に土地の買取を依頼できるのはまれなケースです。
そのため、買取の依頼先を国や自治体に限定するのはおすすめできません。
国や自治体以外にも買取先の幅を広げれば、その分土地を処分できる可能性が上がります。
もし土地の買い手が見つかれば、売却金が手に入るだけでなく土地の維持や管理に割くコストの削減にもつながります。
不動産仲介業者などに相談して買い手を探すのもおすすめです。
ただし、立地条件が悪いなどの理由で使いづらい土地の場合、買い手が見つからない可能性もあるので注意しましょう。
⑤土地の活用方法を考える
土地の売却が難しい場合、土地を有効活用できないか考えましょう。
駐車場や倉庫、貸農園、アパート建設による賃貸経営などで活用できれば、不要だと思っていた土地で収益を得られます。
初めての方にとっては難しい場合もあるので、不動産業者に相談して土地の有効活用について相談しましょう。
⑥相続放棄をする
相続予定の土地や既に相続してしまった土地が不要な場合、相続放棄をすることで、不要な土地の所有から解放されます。
相続放棄とは、遺産として受け継がれるプラス資産とマイナス資産の両方の継承を拒否する手続きです。
相続放棄をすれば土地の新たな所有者にならずに済むため、土地の維持や管理をする必要もありません。
ただし相続放棄には、「相続発生を知った日から3ヶ月以内」という期限があるので注意しましょう。
また、銀行預金など他の財産も継承できなくなります。
さらに、たとえ相続放棄しても他の相続人が土地を受け継がなければ、その土地は亡くなった人の名前で登録されたままとなる点にも、注意が必要です。
国に土地を引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」とは
国や自治体に土地の買取を断られた場合、知っておきたい制度があります。
それは「相続土地国庫帰属制度」という制度です。
「相続土地国庫帰属制度」とは、相続や遺言により宅地、山林、農地などの不動産を継承した人が、特定の費用を支払うことにより、その不動産の権利を国に移譲できる制度です。
不要な土地を国に変換できるので、その後の維持や管理などの必要もなくなります。
どうしても不要な土地を処分したい場合には、活用できないか検討しましょう。
相続土地国庫帰属法の制定にある背景
相続土地国庫帰属法は、令和5年4月に制定された新しい制度です。
このような制度が制定された背景には、どのような要因があるのでしょうか。
以下の4点を見てください。
- 所有者がわからない土地が増えている
- 土地所有権の放棄に関する明確な法的枠組みが存在しない
- 適切な管理が行われず、利用されていない土地が増加している
- 土地の売却を望む所有者が増加傾向にある
これらの課題が発生する背景には、「相続によって得た土地を処分したいと考えても、手続きや家庭が複雑で困難」という実情があります。
たとえば、前述した社会的問題の中で挙げられた「所有者不明」の土地は、特に問題が複雑です。
相続により土地の登記簿を確認した際に、まったく見知らぬ人が所有者として記載されているケースも珍しくありません。
また、遠方で土地の管理が難しかったり、管理にかかるコストが負担になったりする例も多いです。
加えて、土地を有効活用しようとしても、不動産に関する専門知識がない個人にとっては、かえって赤字に陥るリスクが伴います。
これらの社会的な背景を踏まえ、政府は不要となった相続土地を受け入れることでこれらの問題に対処しようと「相続土地国庫帰属制度」を導入しました。
相続土地国庫帰属法のメリット
では、相続土地国庫帰属法にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは主なメリットとして、以下の4点を解説します。
- ①国が引き取ってくれるので安心できる
- ②引き取り手を探す手間が省ける
- ③不要な土地を選択的に手放せる
- ④山林や農地なども対象になる
①国が引き取ってくれるので安心できる
国が受け取り機関である点は、相続土地国庫帰属制度の大きな利点と言えます。
特に、先祖代々利用されてきた土地の場合、見知らぬ第三者に売却したり、贈与したりといった点に躊躇を感じる場合も多いです。
さらに、もし売却や譲渡後に不適切な管理が行われなければ、地域社会からの批判を受けるリスクも考えられます。
一方相続土地国庫帰属制度を利用すると、国が受け取る側となるため、安全性に対する信頼が高まります。
国有地として国による適切な管理が行われるため、土地を手放した後に地元住民からの不満を招く恐れも軽減できますね。
②引き取り手を探す手間が省ける
余剰な不動産を処分する際に困難な点は、適切な引き取り手を見つける作業です。
活用しづらい土地であるほど、受け手を探す作業は一筋縄ではいきません。
手間のかかる管理や、用途に乏しいものの固定資産税が高額な不動産は、一般的に需要が低いものとされます。
相続土地国庫帰属制度を利用する場合、特定の条件さえクリアできれば国は受け取りを拒否できないため、個人で受け手を見つけ出す労力が不要になります。
③不要な土地を選択的に手放せる
従来、相続放棄を選択すれば望まない土地の相続は避けられましたが、同時に他の遺産も全て相続できなくなるため、特定の望まない不動産だけの放棄はできませんでした。
相続土地国庫帰属制度が導入されたことで、不必要な不動産と他の財産を最初に継承し、その後で不要な不動産のみを国に移譲でき、実質的に、不要な不動産のみを選択的に手放せます。
④山林や農地なども対象になる
売却が特に難しい土地の代表例に農地や山林が挙げられます。
農地の場合は農地法により取引に厳しい制約があり、引き取り手を見つけるのは容易ではありません。
山林に関しては、農地法による制限はそれほど厳しくありませんが、境界の不明瞭さや林業従事者の不足、自然災害のリスクなどの理由から、買い手を見つけるのが難しいです。
しかし、相続土地国庫帰属制度では、農地や山林を含め、どの種類の土地でも差別なく審査されるため、宅地などと同様に扱われます。
相続土地国庫帰属法のデメリット
上では相続土地国庫帰属法のメリットを解説しました。
魅力的な制度に思えますが、注意しなければならないデメリットもあります。
- ①時間がかかる
- ②費用がかかる
- ③手続きや要件が複雑
①時間がかかる
すぐにでも土地を手放したい方にとって大きなデメリットなのが、時間がかかる点です。
一部は書類審査で完了するものもあるものの、現場確認が必要なケースも多く、自然と審査期間が長引くことが予想されます。
さらに、この制度への申請に際しては、建物の撤去や相続登記など、予め完了させておかなければならない手続きや業務が多数あるため、時間の捻出が必要です。
②費用がかかる
相続土地国庫帰属制度を使用する場合、管理経費の一部として、国に特定の負担金の支払いが必須です。
この負担金は、土地の種類に基づく通常の管理費から導き出された「10年間の土地管理費用に相当する金額」として計算されます。
基本的には一筆あたり20万円が目安とされていますが、土地の種別や大きさ、位置するエリアによって、その金額は変動する場合もあります。
また次に解説するように、相続土地国庫帰属法は手続きが複雑です。
専門家に依頼した場合には、別途費用も発生するので注意しましょう。
③手続きや要件が複雑
相続土地国庫帰属制度を利用するには、多くの要件を満たす必要があり、はかなりの手間が伴います。
土地の境界の確定や、敷地内にある建物や遺留品の撤去など、やらなければならない作業が多いです。
また、国が行う審査の際には現地での調査に同席しなければならない場合もあります。
申請に必要な書類も多く、必要書類の集め方には専門的な知識も必要です。
相続土地国庫帰属法の利用に必要な要件
相続土地国庫帰属法を利用するには、定められた要件をクリアしなければなりません。
大きく分けて「利用する人の要件」「土地の要件」「費用の要件」の3つを充たす必要があります。
それぞれの要件について詳しく見ていきましょう。
利用する人の要件
相続土地国庫帰属法を利用できるのは、遺言または相続により土地を受け継いだ相続人だけです。
これに反して、土地を購入した人はこの制度の適用対象外となります。
たとえば、原野商法による損害を受けた人や、売れ残った別荘地を買った人は、この制度を申請する権利がありません。
原野商法で被害を受けた人や別荘地を購入した人は、土地を「購入」によって得ているため、この制度の要件を満たしません。
また、たとえ相続人でも生前贈与を受けた人や家族信託を通じて財産を譲り受けた人は、除外されます。
これは、生前贈与や家族信託が「相続」には該当しないためです。
一方で、原野商法で損害を受けた人や別荘地を購入した人の相続人は、この制度を利用する資格があります。
ですので、原野商法で騙されたり、別荘地を持っていることによる困難を理由に断念する必要はありません。
土地の要件
相続土地国庫帰属法は、どのような土地でも引き取ってもらえるわけではありません。
中には引き取りの要件を満たせない土地もあるので注意してください。
具体的には以下のような土地は、相続土地国庫帰属法の基準をクリアできません。
- 担保に入っている土地
- 土壌が汚染されている土地
- 境界線があいまいな土地
- 建物が経っている土地
また、たとえ審査基準を満たしていても、崖地や遺跡・廃棄物などがある土地、災害の危険区域などに該当する土地などは、それぞれケースごとに審査され、結果的に審査に落ちてしまう場合もあります。
費用の要件
相続土地国庫帰属法の利用には「負担金」という費用がかかります。
負担金が捻出できない場合は、残念ながら制度を利用できません。
負担金とは、国への土地帰属後に発生する管理経費の一部を、申請者が支払うお金です。
この「一部」とは、具体的には10年間の管理コストを指します。
10年間のコストとは、実際にかかった管理費用ではなく、国によって予め設定された規準に基づいて計算された金額です。
そのため、追加での支払いは発生せず、基本的に20万円が原則とされています。
ただし特例として、高品質な農地、住宅地の宅地、山林といった土地は、面積に応じた金額が設定されます。
さらに審査手数料として、一筆1,4000円の費用が発生します。
国に土地の買取を依頼するのは簡単ではない
この記事では国に土地の買取を依頼したい方に向け、国の制度や買取を断られた場合の対処法などを解説しました。
国に土地の買取を依頼する場合、買取をするだけの価値があると判断しなければ、受け付けてもらえません。
新たな道路や線路、公共施設などを建設する予定があるエリアであれば買い取ってもらえる場合もありますが、そのようなケースは稀です。
そのため、土地の買取先は国に限定せず、土地活用の方法を考えたり不動産仲介業者などに相談して買い手を探したりするなどして、選択肢を幅広くもちましょう。
また、費用や時間がかかっても信頼できる受け手に土地を引き取ってもらいたい場合、相続土地国庫帰属法を利用して国に土地を引き取ってもらうのもおすすめです。
費用や時間はかかるものの、引き取り手を探す手間が省けたり、不要な土地を選択的に処分できたりと、メリットもあります。
記事で解説した内容を参考に、納得のいく土地の処分方法を考えましょう。