
不動産売却時は確定申告が必要!申告の流れ・必要書類の書き方を完全ガイド【決定版】
不動産を売却したときには、条件付きで譲渡所得税という税金が課されます。
譲渡所得税は給与などの所得とは異なるため、別途で課税されます(分離課税)。
分離課税が発生した場合は確定申告の手続きが必要になりますが、普通のサラリーマンで確定申告を自分でやったことのある方はほとんどいないでしょう。
そこで今回は、不動産売却後の確定申告の手続きの流れ・ポイントを紹介していきます!
※確定申告は不動産売却後に必ずしなければならないものではありません。不要なケースはこちらにまとめてあるので、事前にチェックしましょう!

確定申告は不動産を売却した翌年2月16日~3月15日におこなう
不動産売却後にかかる税金は、所得税、住民税、復興特別所得税です。
これらは譲渡益が発生した場合に課されるため、一緒くたに譲渡(所得)税とも呼ばれます。
このうち、所得税に関して確定申告が必要となります。
注意点として、確定申告は不動産売却(成約)の翌年に手続きをします。
申告の時期は毎年2月16日から3月15日までと決まっており、管轄の税務署に申告するようになります。
申告が遅れたり、手続きが不十分だったりすると税務署から確認、催促の手紙が届くので注意しましょう。
不動産売却後の確定申告の流れ
確定申告は、以下の流れでおこないます。
- 課税譲渡所得の算出・所得税の計算
- 必要書類の準備
- 確定申告書の作成
- 書類一式を税務署へ提出
ここからは、それぞれの手続きの内容をより詳しく見ていきます。
課税譲渡所得の算出・所得税の計算
譲渡所得税がいくらか計算するには、まず譲渡所得(売却益)を調べなければいけません。
譲渡所得は、以下の計算式で算出することができます。
売却価格-(売却費用+購入費用+取得費用)-特別控除=譲渡所得
こちらの計算式をわかりやすく解説すると、新築の家を買った費用+買うためにかかった費用(登記費など)+売却費用(仲介手数料など)より売却益が上回らなければ譲渡所得は発生しません。
一般的に不動産は築年数が経つほど価値が低下するので、確定申告が必要なケースは意外と稀ということですね。
譲渡所得税率は不動産の所有期間によって変化
譲渡所得がプラスだったなら、こちらに税率をかけて課税額を算出します。ただ、税率は売り手の不動産所有期間が何年だったかによって、以下のように変化します。
税金の種類 | 5年以下 | 5年超10年以下 | 10年超 |
---|---|---|---|
所得税 | 30% | 15% | 10% | 住民税 | 15% | 5% | 4% |
ただ、注意点として、所有期間は不動産の購入日~引き渡し日までではなく、購入日~引き渡し日までの1月1日までで計算します。
つまり、2013年の5月1日に買った物件を1018年5月1日に売った場合、所有期間は4年7ヶ月(2013年5月1日~2018年5月1日)となり税率は軽減されません。
必要書類の準備
税額の計算が済んだら、次に必要書類を準備します。
確定申告の必要書類は、税務署から取得する書類と、自分で用意する書類の2種類があります。
税務署から取得する必要書類
確定申告時に税務署から取得する書類は、大きく分けて以下の3つです。
- 確定申告書B様式
- 所得税青色申告決済書(不動産所得用)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
こちらは管轄の税務署に行けば取得できますが、税務署の公式サイトからダウンロードすることもできます。
自分でプリントしても問題なく受領してもらえるので、お忙しい方におすすめです。
自分で用意する必要書類
自分で用意(保管)しておく提出書類は、以下の3通りとなります。
- 不動産購入時の売買契約書
- 不動産売却時の売買契約書
- 仲介手数料や印紙税など、売却費用の領収書
書類の一部を紛失してしまった場合は確定申告ができないか、概算値(大抵の場合、実際より高額)で税金計算をされるので注意しましょう!
白紙の確定申告書を取得したら、記入をしていきます。※確定申告書の作成の流れは、詳しく後述します。
書類一式を税務署へ提出
確定申告書が作成できたら、事前に揃えた書類と合わせて、所定の期間に税務署へ提出します。
申告期間が限られており、特に期日(3月15日)近くは非常な混雑が予想されるので注意しましょう。
もし期間内に申告できなかった場合、完納するまで日割りで延滞税が発生してしまいます。
確定申告書作成の流れをダウンロードから記入までわかりやすく解説!
確定申告がはじめての方にとって大きなハードルとなるのが、確定申告書の作成でしょう。
国税庁の公式サイトには一応、申告書作成の方法ガイドが載っていますが、専門用語が多く、初心者の方が理解できるようなものではありません。
そこでここからは、はじめての人でもわかるように、書類作成の流れを解説していきます!
①国税庁公式サイトから書類をダウンロード
まず国税庁公式サイトを開きましょう。
トップページの左上に「税の情報・手続き・用紙」というカテゴリがあるので、こちらにカーソルを合わせます。
すると、上から2番目に「申告手続き・用紙」という項目が出るので、そちらをクリックします。
次に、ページの右側にある「申告・申請・届出等・用紙(手続の案内・様式)という項目をクリック後、ページ中央の「確定申告等情報」の見出しの左上にある「所得税」というボタンをクリックします。
すると、ページ下部の「各種用紙」という見出しの下に「確定申告書等」という項目が出てくるので、こちらをクリックします。
ここまで来て、やっと書類をダウンロードすることができます。
ここから、以下の書類をプリントしましょう。
「確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等」からダウンロード
- 申告書B様式(第一表・第二表) 申告書第三表
- 所得税青色申告決算書(不動産所得用)
「確定申告書付表等」からダウンロード
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】(1~4面)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】(5面)
②譲渡所得の内訳書を作成
まず、「譲渡所得の内訳書を作成していきます。
こちらに記入するのは、以下の項目です。
- 不動産の所在地
- 土地・建物の種類
- 利用状況
- 売買契約日・引き渡し日
- 買主の住所・氏名・職業
- 譲渡価格
- 代金の受領状況
- 売却した理由
ここまでが、第2面の記載内容となります。
その後、第3面に以下の項目を記入します。
- 不動産の購入先・支払先・譲渡価額の5%
- ※減価償却費・取得費
- 仲介手数料・印紙税の支払先・支払金額
- 譲渡所得金額(取得期間5年以内は「短期」、5年超は「長期」をマーク
基本的には土地と建物を分けて記入しますが、マイホーム(建物+土地)ごと売却した場合は、それぞれの金額を分けて算出した上で記入する必要があります。
また、減価償却費・取得費に関しては、物件の築年数によって決まった数字が適用されます。
こちらにカンタンにまとめてあるので、ぜひ参考にしてください!
→木造住宅の耐用年数とは?減価償却・査定への影響をわかりやすく解説!
③申告書B第一表の左半分を記入
こちらは、申告書Bの第一表です。
次に、こちらの上の個人情報、次に「収入金額等」と「所得金額」の欄を記入します。
ちなみに、最上部の「申告書B」と書かれている左側の空白に確定と記入するのを忘れないでください。
こちらは、最新の源泉徴収票の数字を書き写すようにしましょう。
ただ、以下の項目は源泉徴収票と申告書の名称が統一されていないので、注意が必要です。
申告書B | 源泉徴収票 |
---|---|
社会保険料控除 | 「社会保険料等の金額」を記入 |
生命保険料控除 | 「生命保険料の控除額」を記入 |
地震保険料控除 | 「自身保険料の控除額」を記入 |
配偶者(特別)控除の計算方法
申告書B第一表の左下に配偶者(特別)控除という欄があります。
生計を一にする配偶者がおり、合計の所得額が38万円以下ならば、所得税の控除を38万円受けることができます。
配偶者控除は、所得に応じて以下の金額が適用されます。
配偶者所得(収入-65万円) | 配偶者控除の金額 |
---|---|
38万円超~40万円未満 | 38万円 |
40万円以上45万円未満 | 36万円 |
45万円以上50万円未満 | 31万円 |
50万円以上55万円未満 | 26万円 |
55万円以上~60万円未満 | 21万円 |
60万円以上65万円未満 | 16万円 |
65万円以上70万円未満 | 11万円 |
70万円以上75万円未満 | 6万円 |
75万円以上76万円未満 | 3万円 |
④申告書B第二表を作成
次に、申告書B第二表を記入していきます。
ここは基本的に、源泉徴収票の記載内容を転記します。
まず「所得の内訳」部分に、収入金額と源泉徴収額を記入します。
次に、「社会保険料控除」欄の「支払い保険料」に、源泉徴収票の金額を転記します。
そのほかの生命保険料控除、地震保険料控除には「源泉徴収票と同じ」と記入するだけでOKです。
⑤申告書第三表に内訳書の記載を転記
次に、はじめに記入した内訳書の内容を、申告書第三表に転記します。どの部分をどこに転記するかは、以下の通りです。
譲渡所得の内訳書 | 申告書第三表 |
---|---|
4.A:収入金額 | 「収入金額」の該当項目 |
4.B:必要経費 | 〇分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項「必要経費」 |
4.C:差引金額 | 〇分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項「差引金額」 |
4.E:譲渡所得金額 | 「所得金額」の該当項目 |
1.(1)所在地 | 〇分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項「所得の生ずる場所」 |
次に、左下の「税金の計算」というところに、申告書B第一表の記載内容を転記していきます。
申告書B第一表 | 申告書第三表 |
---|---|
「所得金額」合計 | 総合課税の合計額⑨ |
「所得から差し引かれる金額」合計 | 所得から差し引かれる金額㉕ |
次に、所得金額を1,000未満の端数を切り捨てて、下の66番の項目に、⑨-㉕の金額を64番の項目に記入します。
⑥第三表の右上に算出した税額を記入
次に、第三表の右上の「税金の計算」という項目に、自分で課税額を計算して記入します。
こちらに記入が必要なのは、以下の3項目です。
- 64対応分(71)
- 66対応分(73)
- 合計(78)
まず、66対応分(73)に記入する方法を見ていきます。
こちらに記入する数字は、以下の数式で算出します。
66番に記入した数字(所得金額)×※¹所得税率
※¹所有期間5年以内:30%、5年超:15%
最後に、64対応分(71)に記入する数字の算出方法を紹介します。
64番に記入した数字(所得金額)×※²所得税率-控除額
※²こちらの税率・控除額は、所得金額に応じて以下のように決まっています。
所得金額 | 対応の所得税率 | 対応の控除額 |
---|---|---|
1,000円以上195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円以上330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円以上695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円以上900万円未満 | 33% | 636,000円 |
900万円以上1800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1800万円以上 | 40% | >2,796,000円 |
こちらの表を参考にして、計算をします。
⑦申告書B第一表の右側を記入して完成
最後に、今まで第二表、第三表に記入した数字を使い、第一表の右側を記入していきます。これが終われば、確定申告書作成完了です。
記入の方法・転記に対応する項目は、以下の通りとなっています。
第二表、三表 | 申告書B第一表 |
---|---|
第三表86番 | 「税金の計算」上の㉖に対する税額(㉗) |
再差引所得税額(㊵) | ㊳-㊴ |
復興特別所得税額(㊶) | ㊵×2.1% |
所得税及び復興特別所得税の額(㊷) | ㊵+㊶ |
所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額(㊺) | ㊷-㊸-㊹ |
所得税及び復興特別所得税の第3期分の税額 (㊼) | ㊺-㊻ |
確定申告後の納税の流れ
不動産売却をした翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をおこなったら、その後に所得税と復興税を納税します。
ちなみに、住民税は申告後の5月に納付書が送られてくるので、届き次第支払うようになります。
住民税の納付は原則4期にわかれているので、4分割して支払います。
住民税の支払い月は、6・8・10・翌1月の末日となっていますが、土日の場合は週明けが期日となります。
不動産売却の確定申告・税金手続きは期限内に確実に
不動産売却には、さまざまな手続きが付き物ですが、こうした作業を期限内に行わないと、遅延金や罰金が発生してしまいます。
確定申告も罰金が発生する仕組みになっているので、気を付けて手続きを行いましょう。
また、不動産売却は、ミスを犯した際の損失が大きいものでもあります。
せっかく高額の不動産売却を実現したと思っても、こうした所で出費が生まれると、結果的に損をしてしまい、新居購入には足りなくなるということが起こりえます。
細かい手続きにも最新の注意を払って取り組みましょう。
