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日照権とは?日当たりの状況で起こるトラブルを事例・判例から徹底解説

【更新日】2020-12-18
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日照権

住宅街に大きな建物が建築されることで、周辺住民が「日照権が侵害された!」と訴えを起こしたというニュースが良く放映されています。

ただこの日照権は、具体的にどんな権利なのかという議論をあまりおこなわずにきた経緯があります。

日照権とは一体どんなものなのか、日照権侵害はどんな時に問われるのかなどを、今回は詳しく解説していきます。

日照権の具体的な内容

実は、建築基準法の中で「日照権」というものが明記されている訳ではありません。

日照権は、建築基準法に記載されている以下2つの規制が根拠になっています。

  • 斜線制限
  • 日影規制

斜線制限

斜線制限

斜線制限とは、建物の間の空間を確保することで、日照や風通しを妨げないというものです。

この斜線制限は➀道路斜線制限②隣地斜線制限③北側斜線制限という3種類に分かれています。

制限 内容 対策
道路斜線制限 接している道路の幅に基づき、反対側に建つ建物の日照確保をおこなう 上空に向かって引いた斜線より低い位置に建物を建てる
隣地斜線制限 隣地の建物が20mもしくは31mを超える際にうける制限 マンション・オフィスビルは建築エリアを十分吟味する必要あり
北側斜線制限 北側の隣地の採光・通風を確保する必要がある 北側の道路の反対側と敷地境界線の距離制限をクリアする

日影規制

日影規制

日影規制とは、中高層の建物を建てる際、隣接した物件の日当たりがある時間帯と日陰になる時間帯を計測し、日陰の時間を一定時間内に留める必要があるとした規制です。

計測する日時は、1年で最も日の短い冬至が基準となります。(12月22日頃)

用途地域と高さを計測して、日影規制が必要と見なされたものだけが対象になります。

日照権の侵害を訴えられる建物は必ずしも違法ではない

建築基準法から関連する内容をピックアップし、ルールとしての日照権をまとめるなら上記の通りになります。

しかし、ニュースで言われるように“日照権を侵害した”と言われて訴えられる建物は、必ずしも上記の内容を違反している訳ではありません。

上のルールをしっかり守っていたとしても、日照権侵害を訴えられる例は多いのです。

ルールの範囲内で自由に建てても日照権侵害を訴えられるリスクがある

前述の通り、ルールの範囲内で建てても日照権侵害を問われる建物があるどころか、ニュースで話題になる事例の大半はこうしたケースに当てはまります。

ハウスメーカーは建築基準法の基本的な事柄はほぼ100%遵守するので、ルール違反の物件が建つことは中々ありません。

こうした訴えが出る理由としては、以下のことが考えられると思います。

  • 先に住んでいた人のほうが偉いという偏見がある
  • 地域の“暗黙のルール”があると思い込んでいる
  • 大きな声を上げた人のほうが尊重されやすい世の中になっている

結局のところ、上記のような理由をもって訴えをおこすのなら、先に住んでいた人たちのわがままと一刀両断することもできます。

ただ、ある地域に引っ越して生活するということは、先に住んでいた人達と共同生活をおこなうということでもあるので、彼らが感情的に受け入れてくれない以上、安定生活をおこなうのは難しいというのも正直なところです。

日照権侵害のクレームは近隣説明会で受けることが多い

高い建物を建てる時にクレームを受けるのは、近隣住民向けに開かれた事前の説明会の場が多いです。

事前の説明会はその名の通り、これから建てる建物の概要などを説明する場です。

ただ、ニュースやドラマの影響により、出席者が好き勝手クレームを入れられる場だと勘違いしている方も多いです。

建築基準法に違反した物件ならクレームを受けても仕方ないですが、合法の物件に対して、「出ていけ!」などと言うのは意味がありません。

合法の建物に対して近隣住民は、元々住んでいた人の目線から希望・要望という形で意見を言う必要があります。

建物を少しだけズラすなど、実現可能な範囲の希望ならば通るケースも多いです。

「普通」や「常識」を根拠にした法律は改正されつつある

日照権が侵害されたという訴えが起こる理由として、住居がこれまで、「普通」や「常識」という価値観に重きを置きすぎたこともあります。

日照権侵害を訴える人は、「たとえ法律上の問題がないと言っても、こんな高い建物を建てるなんて、常識的にありえない!」と怒っているケースがほとんどです。

ただ、人の常識は他人に必ずしも通用するとは言えません。

近年ではこうした、今までの価値観を改正する動きも活発になっています。

その一例が2020年4月におこなわれた民法改正です。

この改正により、不動産取引で今まで適用されていた瑕疵担保責任が、契約不適合責任というものに変更されました。

瑕疵担保責任は、極端にいうと雨漏りやシロアリなどの「常識的に考えて欠陥と見なされるもの」を買主に隠していた時にペナルティが発生するものでした。

しかし、外国で暮らしていた方などにも一律にこの常識が通用する訳では必ずしもないため、「分かりにくい」という意見が多くありました。

一方で新しい契約不適合責任は、契約書に明記されていない違反が発覚したらペナルティが発生するという、非常にわかりやすい内容となっています。

価値観の多様化や多国籍化に伴い、日照権侵害に対する上記のような考え方は変えていく必要がある…という社会の方向になっているのです。

自分にとって心地よい居住環境が維持できる確証はない

ただし実際問題として、今まで快適に暮らしていた中で急に高い建物が建ったとしても、元々の住民にメリットは一切なく、見返りも受けることはありません。

そのため、気持ち的には日照権の侵害を訴える人に気持ちも分かります。

ただ、そもそも近隣住民も法律を守っているのであれば、それ以上の快適な生活環境を周囲が確保しなければいけないというルールはありません。

特に持ち家を買う際などは、将来的に周辺環境が変化するリスクも踏まえておく必要があります。

受忍限度を超えた建物は法律の範囲内でも認められる

いくら法律を守っていても、実情を考えると訴えられるのに無理はないと見なされるケースがあります。

はた目から見て日陰になる時間が限定されている、我慢ができる範疇と見なされれば日照権侵害は認められませんが、それを超えた場合は対応してもらえることが出来ます。

この基準を、受忍限度と呼びます。

受忍限度を超えているかどうかは、以下の項目などによって判断されます。

  • 遮光の度合い
  • 日照の必要性の高さ
  • 事前に日照について考慮した結果かどうか
  • 被害を軽減するための行動をしたか

農地などの受忍限度は低い

この受忍限度は、商業施設などは比較的高い傾向にあり、簡単に日照権侵害を認めてもらいにくいです。

一方、農地は日照が必要不可欠になるので、受忍限度は低くなります。

ただ、訴えを認めてもらうには、日照時間がどれくらい減り、それによって収穫にどれほどの影響が出たのかの客観的なデータを準備する必要があります。

日照権に関するトラブル事例・判例

日照権に関するトラブルはどんなものがあるのでしょうか?

実際に起こった過去の事例を紹介していきます。

事例➀保育園の日照がマンションで遮られる

保育園の近隣にマンションが建ったことに対して、保育園関係者がマンション経営者を訴えた事例です。

このケースでは、マンションの建設によって保育園の園庭の日照が妨げられてしまっていました。

これに対して裁判所は、「保育園は単なる教育の場ではなく健全な発達を促す場であり、今回の事例は園児の成長を妨げる」と見なされ、日照権が認められました。

事例②太陽光発電の売電量が減ってしまう

一戸建て住宅の屋根に太陽光パネルを設置し収入を得ていたところ、近隣に高い建物が建って1日あたりの日照量が減少。収入も減ってしまいました。

居住者はこれに対して訴えを起こしましたが、以下の3つの点を元に訴えを棄却されました。

  • 太陽光発電に関するルールはまだ整備されていない
  • 隣に建物が出来れば売電量が落ちることは事前に想定できた
  • 建物の生活環境そのものには大きな影響がない

事例③総合的な判断により訴えを棄却されたケース

高いマンションが建って住まいの日照が遮られた時も、総合的に判断して日照権侵害の訴えを棄却するケースは少なくありません。

平成15年に起こった裁判では、以下の理由で訴えを棄却しています。

  • 1年の7~8割は十分な日照時間を確保できている
  • 元々の日照にも問題はあり、今回の訴えが全てマンション建設による結果とは言い切れない
  • 周辺に高層マンションが建設されることは容易に想像できた

日照権を主張する際のポイント

あなたが訴える側となり、日照権を主張する際はどのようにすべきなのでしょうか?

主張を確実に通したいなら、ただクレームを入れるのではなくポイントをしっかり抑える必要がります。

まずは冷静に話し合う

日照権侵害を声高に訴えるより、まず当事者間で冷静に話し合いを行いましょう。

実際、日照権が侵害されているのは利害がぶつかっているからではなく、単に相手が気付いていないからという可能性もあります。

行政に相談する

建築業者がグレーな対応をしている場合は、自治体の窓口に相談することをおすすめします。

訴えの正当性が認められると行政指導が入るので効果的です。

日照権侵害を一刻も早く終わらせたいなら疎明が必要

高層の建物が基礎から出来上がり、このまま建設が進めば日照権が侵害されると思った時は、裁判所に疎明をすることで建築の差し止めを要請できます。

疎明とは照明よりも一段ハードルの低い手続きで、その訴えが理にかなっているかどうかを立証することが重要になります。

訴訟をおこなう

最終手段として、裁判所に訴えを起こして強制執行をしてもらうこともできます。

ただ前述の通り、日照権侵害が認められるためには近隣に高い建物が出来たというだけでは不十分です。

また、弁護士に依頼をするにあたって数十万円の費用が発生します。

日照権に関する内容はその都度解決していく必要がある

そもそも日照権というものの定義が曖昧である他、どれくらい権利が侵害されているかは個別の事情を鑑みなければ調査することは出来ません。

それぞれの意見や希望によっても、解決の方法は変わってきます。

日照権に関しては訴える側の場合も訴えられる側の場合も、その都度で対応することが大切です。

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